Japan Cave Diving Society

実際の体験

 
 現地に着き、見た物は左写真のような環境であった。水はとてもキレイだ。すごい。本当に透き通っている。

 あたりには“NO DIVING”や“OPEN WATER DIVER 禁止”の看板がたっている!?

 ケーブに潜るのだが、はじめは何がおもしろいのかまったくわからなかった。


用意した
器材はかなり特殊

①ごついバッテリー付きのすごく明るい水中ライトと予備の水中ライト2つ

②いろんな物をぶら下げられるバックマウント式で体にビシッとフィットするBC。

③予備のマスク。


④ダブルタンク。
充填しているガスはナイトロックス

⑤3m程の長いホースのついたレギと⑥もう一つのレギ。

⑦リール2個などだ。

 浮力などをチェックしエントリーした。そしていよいよケーブに入っていった。

 すこし入っていくと、ライトで照らされた看板が目に留まった。

STOP!危険!死神の絵もある。恐い顔だ。その下にはレギをくわえているガイコツダイバーが数人横たわっている。
なんという看板だ。 しかし今回のトレーナーでもあるラマール(ケーダイビングの第一人者)はその看板を尻目にどんどん奥に突き進んでいく。 どこまで行くんだ?

  水深計をみる。20m,25m,30m……しかしあまり深く潜っている感じはしない。常に天井があるからだ。
洞窟はまっすぐ横だけではない右に左に下に上に分かれ道あり広い所も人一人しか通れないギリギリの狭い所もある。湧き水だけあって流れがすごい。横を向いたらマスクが飛んで行きそうだ。

 大分奥にきた。下手にフィンを使うと沈殿物が舞い上がり透明度がゼロになる。恐い……。

 ケーブの中ではいろんな事を考える。
ケーブは一本道ではない、分かれ道か?パニックったら終わりだ。すぐに浮上できない。
出口が分からなかったら、迷ったら?
俺は現役のインストラクターだ。大丈夫だ大丈夫だ。

 ブリーフィングでラマールが言っていた言葉が頭をよぎった。
“このケーブでは過去に38人の犠牲者がでている。”
げげっ!!やっぱり恐い……
エアーあるかな?残圧は?なれない器材で手間取る。あるある。
もしもバディが細い所でエアー切れになったら?いや3m程のオクトだから一人ずつ通れるはずだ。
ライトがきれたら?マスクが飛んでったら?いや予備がある。

 

 バディがパニックになったら?いやこのバディもイントラだ。そしてパニックになっても俺もイントラの端くれだ。キチンと対応してやる。大丈夫だ大丈夫だ……。

  ラマールはどこだ?いるいる。こいつ速い…。待ってくれ
どこまで奥に行くんだ?いや落ち着け大丈夫だ…………。

  はずかしい事だが
始めうちはまったく初心者に帰ったようだった。
今思えばダイビングを始めた時インストラクターがまるで雲の上の人のように思えたものだがそれと同じ気持ちになった。

  ラマールから“帰ろう”のサインがでた。浮上と同じサインだ。
ああ、帰れる……。正直な気持ちだった。
バディにも伝える。大きくうなずく。

  ケー
内のラインを見失わない様に今度は水の流れに乗ってビューンと戻っていく。出口に向かっていく。まるでジェットコースターのように。気持ちいい!

  水深の変化が激しい。中性浮力をとりながら、上に下に右に左に…

???…行き止まりだ???間違ったか???!!!
上をみると表の光りが見えた。戻ってきたんだ!
 極度の緊張の後のとめどもない安心感。
外の光りが見えた時、本当に安心した。帰ってきたんだあー。

  その時
距離にして1km程か、このケーを制覇した充実感と自分に勝った自信、そして安心感が入り交じり、最高にハイな気分になった。ああ!…なぜか鼻歌が自然にでてきた。
なんだ?この気持ちは???…なんだ?

  その後、何回も潜ったが、中には途中で帰ろうとサインをだしたバディ(イントラ
でベテランダイバー)もいた。
しかし、それは決して恥ずかしいことではない。正直、自分自身も何回もだしたくなった。出さないで何かあったらそれこそ恥ずかしい。彼を責める者は誰もいなかった。もちろんである。

 
なんだかんだありながら徐々に慣れていき、最終日、ラマールは参加者全員にいった。
「君たちをケーブダイバーとして認める。」
テッキーの仲間入りだ。

 これにいたるまで、陸上でのトレーニング(リールワーク)やケーという特殊な環境、特別なハンドシグナルなどのトレーニングもした。またその指導法も学んだ。

 ケー
内でライトが切れたときの対処もした。沈殿物が舞い上がり透明度がゼロの対処法もだ。本当に真っ暗だ、出口に向かうラインも見えない。

 そんな時、エアー切れの時のトレーニングなんかもする。出口も見えない真っ暗なところでだ。バディとの信頼感を強烈に感じた。
やはりこれを行うにはものすごく強い精神力、自信、特別なトレーニングと特殊な器材が必要だ。

 上級者であってもこれらを絶対に備える必要があると感じた。


 結局何がおもしろいか?といろいろ考えた。下手なことをするとはっきりいって命にかかわる環境。そこにいくスリル。 それに打ち勝つ自分。誰もがいけないところへの冒険。探検。自分が切り開く喜び。達成感。制覇感。帰った時のあの安心感。その時にみる外の光り………。また、何個かのケーは途中で帰っている。どうもその先が気になる。あの先はどうなっているのか…。

  これは今までの日本にあるダイビングスタイルの域を確実に越えています。
今までの日本のダイビングは、ダイビングそのものが目的になっているようです。
本来のそれは手段であったはずです。
昔のそれはサカナを突く為の手段であった。

腕を競い、大物を突く為には、と夢中になった。
しかし今はそうもいきません。

今、ダイバーは最上級を目指す人はダイブマスターやインストラクター資格取得となっています。
インストラクターはそれはそれで本当にやりがいのあるいい仕事です。
 人間には、本来、上昇志向とか、うまくなりたいとか、の思考が備わっています。
だから、イントラをとるとかではない、まったく違う方向性の新しいスタイル。
しかし、このケーブダイビングは決して安全とはいきれません。
 今のダイビングも絶対楽しいし、おもしろい。そしてそれはこのテクニカルに比べれば環境そのものが“安全”ともいえます。
冒頭にも書きましたが、あなたがたとえ上級者であっても、今のダイビングに満足しているのならあえてお勧めはしません。
 ただ、もしもあなたの中に、そうじゃない方向を求めているものがあるのなら、これは、今までとまったく違うあなたの高度な欲求を満たすものになるでしょう。 
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